昨今の外国語教育では、「文化」を授業に取り入れる重要性が強くう たわれている。アメリカでは、外国語教育においてのNational Standardsとして 5つのゴールを定めているが、その一つに文化が入れられていることからも明ら かである。また、クリティカルペダゴジーの分野では、従来外国語教育で取り入 れられてきた文化教育の問題点が指摘され、その見直しの必要性が広く議論され ている。日本語教育に関して言えば、教科書の内容や教師の言動が学習者の日本 に対するステレオタイプを助長するような恐れがあると指摘する研究結果も出て いる(Matsumoto and Okamoto, 2003; Siegal and Okamoto, 2003; Kubota, 2003) 。ステレオタイプを通してある文化をとらえるということは、その文化を静的・ 固定的にとらえていることになる。前述のクリティカルペダゴジーでは文化を絶 対的で固定的なものではなく、相対的で流動的なものとしてとらえるべきである と主張している。この点も踏まえ、日本語教育で文化を取り入れようと考えた場 合、教師が様々な視点や切り口から日本文化をとらえる批判的視野を持つことが 必要不可欠となるだろう。
そこで、本発表では理論的・実践的な視野から「文化」を教えることについて多 角的に考察し、批判的視点を踏まえた「文化」を日本語教育へ取り入れていく提 言をしたい。発表では、1)基本的な文化論について触れ、文化のとらえかたの 違いを紹介し、2)クリティカルペダゴジーの立場から日本語教育における文化 的要素を検証した先行研究について考察し、3)批判的視点からの「文化」を日 本語の授業に取り入れた具体例として、「標準語と方言」を扱った授業の報告を する。