学習者に自然な日本語会話を経験させるための様々な試みがあるが 、JFL環境でよく見られる会話パートナーの試みもその一つである。本研究で 対象とする中国の大学でも中国人日本語学習者に日本人会話パートナーを配し、 会話能力の向上が図られている。しかし、そのような会話パートナーと学習者の やりとりの実態はほとんど明らかにされていない。そこで本研究では会話パート ナーと学習者のナラティブのやり取りを会話分析の手法で分析し、その実態の一 端を明らかにすることを目的とする。
マッカーシー(1995)では日本語学習者にとって、ナラティブは事実だけの語 りとなり、話し手や聞き手の評価がほとんどなくなってしまう困難なやり取りで あるとされている。本研究では15組の会話パートナーと学習者に「楽しかった経 験」を含む会話をしてもらい、録音・録画した。次にナラティブの部分のみを取 り出し、日本人女子大生同士の会話に見られるナラティブの分析を行った佐々木 (2006)の結果と比較し分析を行った。
その結果、日本人女子大生同士のナラティブに見られる特徴と異なる点は、以下
の2点である。
・参加者両者による評価の協働構築の連鎖は見られない。
・ほとんどのナラティブには誤用の他者(会話パートナー)修正の 連鎖、及び
自己修正の連鎖が見られた。
本研究から会話パートナーと学習者の会話は自然な日本語のディスコースを保 証するものではなく、また会話パートナーと学習者には、日本語を「教え−教え られる」という関係性が築かれていることが推察される。よって学習者に自然な 会話を経験させるためには、まずそのような関係性を崩すような試みの必要性が 示唆された。