目標言語の母語話者と効果的にコミュニケーションを行うためには、 文法能力、社会文化的能力、談話能力、方略的能力などの総合的な言語運用能力 が不可欠であり、その能力を伸ばせるような練習が教室内外で必要である(松本et al. 2003 )。応用言語学の分野においても、嘗てのCommunicative Competenceをさらに総 合的に捉え、非言語的コミュニケーションの包括を指摘している(Rodgers 2001) 。特に、近年の音声コミュニケーション研究への注目は目覚しく、それゆえ、発 音・音律指導の重要性を強く認識した様々な指導法や学習システムが紹介・開発 されている(Kozasa 2006; 平野 et al. 2006; 戸田2006; Miwa 2003; Matsuzaki et al. 1999 )。
考察の対象としている初級コースでは、ここ数年聴覚のみでなく視覚を利用した プロソディーグラフをアニメーション化し、発音・イントネーション指導を行っ てきた。が、指導・練習直後の学習者の発音に自然性が認められても、本来のコ ミュニケーション自体に学習者が集中している時、例えば、"Someone kindly points out that you've dropped your pencil. How would you respond in Japanese?" というよう なコンテキストが与えられた質問に答える時には、学習者の発音の自然性がくず れてしまうケースがあった。本研究では、このアニメーションプロソディーグラ フを導入した音律指導とサウンドファイルのみの指導の直後の結果、及び指導3ヵ月後の長期的効果の有無を調べる縦断的研究の結果について詳細を述べる。