本発表は、日本語初級から上級の授業における言語文化体験を促進 する本物マルチメディア素材(AM素材)を補助教材として用いた実践を、実例をあ げ報告する。ACTFLのナショナル・スタンダーズが言語伝達、文化、連携、比較対 照、地域社会の五つを目標領域に掲げたことは、最近のテクノロジーの発達によ るAM素材の利用性の高まりと共に、外国語教育におけるAM素材利用の重要性を高 めている。また研究者からは、AM素材から受け取る視聴覚的情報により学習者の 言語理解が深まるという利点や、テクノロジーを用いた授業が学習者中心の環境 を作り出すという効果も指摘されている。
AM素材はインターネットから発信される新聞記事、動画、ホームーページ等の 他、ラジオやテレビで録音録画したものもデジタル化し素材に加えた。取り上げ るテーマは家族や学校といった身近なもの(例、CM一枚の写真、テレビアニメ)か ら言語や文学や社会など抽象的なもの(例、ニホン?ニッポン?、サラリーマン川 柳)を学習者のレベルによって選択するが、活動目標を理解活動中心から表現活動 中心へと変えることで、複数レベルでの利用が可能となった。学習者からは素材 の中に出てくる言語は難しいものの、一連の言語活動を通し与えられたタスクが 完了できたという意見や日本語学習の動機付けに有効だという肯定的な意見が多 く出された。また、母文化との比較、自分の経験との関連付け、学習成果の共有 化など、学習者はAM素材を通して多元的に目標言語文化を体験できた。
これらの素材は共有可能なものもあり、著作物の教育を目的とする公正な利用 範囲内で、今後他の日本語教育者と教材開発に取り組んでいきたい。