近年学習者の日本語力の向上に伴い、時事問題を扱う「日本事情」や 文学の翻訳等を中心としたコンテントベース授業(CBI)が米国の大学でも実施さ れている。その一方、欧州言語で行われている幅広い地域研究の学術トピック( 歴史、政治、芸術等)を扱ったCBIは、学部レベルおいて日本語ではまだその例を あまりみない。学習者の日本語能力や教師の専門知識の欠如、レベルに適した教 材・資料の不足等がその原因とも考えられるが、果たして実際そうなのであろう か。
今発表では、米国中西部の大学で行われた上級コース「戦争と日本人」を例に挙 げ、その成果と意義を考察する。本コースの目的は(1)上級レベルの日本語力 、特に学術的論題に対して意見を表現できる力を伸ばす(2)日本の戦後の歴史 教育の大筋を学びその歴史観を理解し米国のそれと比較しながら平和への提言を 述べる(3)コース終了後の生涯学習への準備、の3点とした。教材には、小中 高の国語教科書、社会・歴史教科書、戦争映画(主にアニメ)、また専門書、論 文も使用し、地元の専門家や被爆者語り部の講義も含めた。日本語を中心としな がらも英語資料も時折加え、日英両語を利用することによって得られる比較学習 も組み込み(例:ウエブでの映画の一般大衆の批評の日米比較)、米国ならでは の日本語CBIを進めることを念頭においた。
コース前後の学習者のスピーチ・ライティングサンプル分析、コース終了後のア ンケート調査の結果を基に、学習者の学習態度、達成感、またコースの成果につ いて報告し、米国におけるCBIの意義、問題、提案を、特に語学教育と日本研究と の繋がりに焦点を当てながら、考察する。