本稿では、日本語による文章の書き方の特徴を、引用における情報 の出所の述べ方の違いから明らかにし、日本語ライティング指導への示唆を得る ことを目的とする。
データとしたのは、日本語母語話者(JN)とそれぞれの母国で日本語を学ぶ中 国語母語話者(CN)および韓国語母語話者(KN)によって日本語で書かれた意見 文、合計150篇である。分析の結果、ほとんどすべての日本語のテキストに見 られる「〜によると」という表現を用いた情報源の提示は、CNではほぼ三分の一 の作文に現れるのに対して、JN(0例)とKN(2例)の作文にはほとんど見られ ないことが分かった。CNでは「アメリカの研究所の調査によると・・・」と情報 の出所を述べるのに対して、JNおよびKNでは「・・・という調査がある」、ある いは「前に本か何かで読んだのだが、・・・」というような前置き表現によって 表される傾向が見られた。またJNの特徴として情報の出所を明示せず、「〜と言 われている」、「〜らしい」のような表現を用いて、引用を自分の考えを一般的 なものとするためのストラテジーとして用いる傾向が観察された。
本稿では、このような結果が得られた原因を、それぞれの母語の違い、言語習 得上の母語の転移、あるいは日本語のテキストや日本語指導、および母語で受け た作文教育の影響などの観点から考察する。ライティングおよび言語習得におい て、引用は重要なテーマであり、本稿の分析結果は、日本語アカデミックライテ ィングの指導において、引用表現の指導をどのように行うべきかについて新たな 示唆を与えることになる。