本発表では,アニメーションのストーリーを語る話しことばの談話 と,その 談話の参加者が後に書いたそのストーリーの作文をデータとして用い(日本人 大学生30名),それぞれのデータにおける「は」の使われ方の実態をもとに, 主題・対比関係という観点から考察を行う。
「は」の主要な談話機能は主題あるいは継続性の高いトピックをマークする ことであるとの先行研究は数多い(野田1985,メイナード1997な ど)。Clancy&Downing(1987)は,「は」が主題を表すという主張は書きこと ばの談話に対して当てはまるもので,話しことばの語りにおいて「は」は対比 関係を表すのが主要な機能だと述べている。
これらの先行研究では話しことば/書きことばのうち片方のデータのみを考 察の対象としているが,本発表では同一のストーリーを語る両方のデータを対 照し,それぞれの談話における「は」の使われ方を指示対象やストーリーの場 面ごとにまとめる。この結果をもとに,1)「は」の出現回数については,書 きことばでは話しことばの約2倍現れていること,2)「は」が主要な登場人 物をマークする割合は,話しことばでも書きことばでもほぼ同程度であるこ と,3)「は」が無生物をマークして対比関係を表す例は,話しことばよりも 書きことばの方が多いこと,などの点を指摘する。また,非母語話者による同 様のデータ(アメリカ人大学生17名)も分析し,話しことばの方が書きことば よりも「は」の出現回数が多いことなど,母語話者の「は」の使い方との違い についても取り上げる。