本研究は、日本語学習者の漢字に対する考え方と新しい漢語を学ぶ力 との関連を調べた。本研究の基盤となるのは、言語学習に対する個人の考え方が 学習ストラテジーに反映するという第二言語習得理論(Abraham & Vann, 1987; Barnett, 1988; Carrell, 1989; Elbaum, Berg, & Dodd, 1993; Ely, 1986; 1989; Horwitz, 1988; Wenden, 1986) と、語彙に対する個人の認識が語彙をどう学ぶかにも影響するという語彙習得研 究の結果(Gu & Johnson, 1996; Kojic-Sabo & Lightbown, 1999; Mori, 1999b; Parry, 1997; Sanaoui, 1995). である。
北米で日本語を学ぶ大学生80人に、漢字に対する意識調査と漢字テストを行った 。意識調査では、漢字の好感度、難しさ、文化的価値、有用性、様々な学習方法 の有効性を問う60項目に、選択式で答えてもらった。漢字テストは、漢字の構成 要素の既存知識と文脈からの情報を基に、未知語の読みや意味を答える問題75問で構成されている。さらに被験者全員が30問の読解テストを受けた。
アンケートと漢字テストの関連を調べるため、読解力の影響を除いた部分相関を求めたところ、漢字に対する意識とテスト結果の間に統計的に有意な相関が認められた。漢字の文化的価値と有用性を理解している学生ほど、部首と文脈の知識を使って未知語を理解する力が高い。さらに、漢字学習ストラテジーの中で、語構造分析とメタ・ストラテジー (O'Malley & Chamot, 1990) が有効だと考えている学生ほど、既存知識を使って新しい語を学ぶ力も高い。回帰分析の結果、漢字学習方法に対する考え方が、テスト結果に影響を及ぼしていることも明らかにな った。