学習者言語における語用的発達に関する研究が増えてきている 中で、ある特定の語用的言語要素(例えば「ね」等のディスコー ス・マーカー)や言語行為(「誉め」「依頼」等)に焦点を絞っ た研究は、学習者の発達を文法語彙能力以外の面からみるという 点で、かつ文法能力と語用的発達の関係を捉える上でも重要なも のである。
これら先行研究の中で、言語行為の力を緩和する要素(モダリ ティー等)はしばしば取り上げられている。しかし、その中であ まり問題にされてこなかったのが、学習者言語の中に表れる比較 的長い(語句レベルを超えた)緩和セグメントである。(例え ば、意見文の中で、自分が誇張していることを認める「こんなこ と言ったら言い過ぎかもしれないけど」等。)このようなセグメ ントは学習者の語用能力と文法能力の関わりのみならず、語用能 力と談話能力の関係を探って行く上で重要になってくると思われ る。
今回の研究では、四つのレベルの口頭試験(各レベル十二人ず つ)における日本語学習者の発話を分析し、前述のような緩和セ グメントが それぞれのレベルでどんな形で表出しているかを談 話分析の観点から比較検討することにより、学習者の語用的発達 について考えていきたい。分析の結果、初・中級の学習者が学習 者独自の緩和ストラテジーを使用していること、中級の一部と上 級学習者の発話には複数の接続詞、接続助詞の使い分けが見られ ること、そして、超級話者はそれに加えてインフォメーションの 提示に強弱をつけるような談話マーカーを使用していることなど が明らかになった。
本稿ではこのような調査結果が 色々なレベルの日本語教育に どのように応用できるかについても考えたい。