本研究は、日本語学習者の漢字に対する意識と学習方法を明らか にし、漢字に対する認識が学習ストラテジーとどう関連するかに ついて調べた。この研究の基盤となるのは、学習者の使うストラ テジーは言語学習に対する考え方を反映しているという第二言語 習得理論である。
全米の八大学の日本語学習者に漢字学習に対する意識調査を行 い、300人以上の回答を得た。学生には、漢字に対する考え方と学 習方法を問う60項目に選択式で答えてもらった。因子分析の結 果、漢字に対する認識では「漢字が好き」「漢字の将来的展望」 「漢字の文化的価値」「漢字の難しさ」「漢字の有用性」、学習 方法では「機械的反復」「文脈を通しての学習」「記憶連想法」 に加え 「語構造分析」 (Nation, 19990) と「メタ認知ストラテ ジー」(O'Malley & Chamot, 1990)の因子が確認された。これは教 師の意識を調べたShimizu and Green (2002) の因子とほぼ同じで ある。
学生の回答をさらに分析してみると「機械的反復」が最も頻繁 に使われている学習方法であるという結果が出た。これはShimizu and Greenの教師の回答と一致している。また「漢字が好き」で、 漢字の「文化的価値」と「有用性」を理解している学生は、「語 構造分析」「記憶連想法」「メタ認知ストラテジー」といった暗 記以外の方法を使って学習する傾向があることも明らかになっ た。
発表では、本研究の現場への応用として二点問題提起したい。 第一に、漢字を学習する際、多くの学生が暗記に頼ろうとするの は、教師の教え方を反映しているからではないか。第二は、学生 に様々な学習方法を身につけさせるには、方法論を教えるだけで は不十分で、漢字そのものに対する態度や意識を高めるような指 導が必要ではないかという点である。