本発表は、日本語を継承語とする二児童の日本滞在による日本語能力の変化の測定結果の報告である。
日本語が継承語の家庭では、日本語、日本文化の維持・発展の為、夏に子供を日本に連れて行く家庭が多い。Clancy (1994)1 は、継承語の維持・発展には、その言語が話されている国に連れて行きイマージョン体験をさせるのが最良の方法であると述べている。Celce-Murcia and Vialla (1983)2 は、6歳8ヶ月の英語話者女児(フランス語は、父親の母語であり家庭でも使用のため継承語となる)のフランス滞在前後の英語、フランス語の能力を測定し、語彙の理解と産出、聞き取り、聞いた物語の再生、構文力をみるためのインタビューのいずれにおいてもフランス出発前より帰国後の正解率が高くなっていると報告している。
現時点で、継承日本語習得の研究では、この種の研究がまだなされていない。本発表は、父親の母語が英語、母親の母語が日本語のバイリンガル家庭で育つ9歳の男児二人の日本滞在前後の日本語力の変化をnarrative の分析とOral Proficiency Assessment for Bilingual Childrenで検証したものである。分析は、言語力とコミュニケーション力を対象とした。前者では、語彙の量と質、文の量と複雑度、ディスコースの質、code switching、後者では発話におけるcompensation strategies の分析をおこなった。データーは、日本出発直前、アメリカ帰国直後、及び 3ヶ月後の3回にわたって採集された。