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鼻音+子音の連続にみる音韻論比較:規則 vs. 制約

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Makiko Asano, San Francisco State University, masano@sfsu.edu

Abstract

大和言葉の「食べて、待って」等のテ形は「語根+て」を基底構造に持つと考えられる が、「て」の前に鼻音以外の音素が来る形には全て無声子音の「t」を含む「て」が続 く。一方、「鼻音+て」の組み合わせでは「読んで、死んで」等、有声子音の「d」を含 む「で」しか起こらない。ところが漢語では「原稿、感心」、外来語でも「ダンス、ピン ク」等、鼻音+無声子音の組み合わせは自由に起こる。つまり日本語では大和言葉だけが 「鼻音+無声子音」の連続が不可なのである。

さて1993年にPrince and SmolenskyがOptimality Theory(以下OT)を発表して以来、 音韻論研究に新たな課題が加わった。それは言語を操る人間の能力・知識を説明するのに Halle and Vergnaud (1984)に代表される「規則」を用いるのがふさわしいのか、OTに 代表される「制約」を用いるのがふさわしいのかという疑問に答えることである。

本稿では先に述べた大和言葉における「鼻音+無声子音=>鼻音+有声子音」の現象を通し て二つの理論の違いを説明する。規則理論では「鼻音に無声子音が続く時、無声が有声に 変化する」といった規則が大和言葉にはあると説く。一方、制約理論では「『鼻音+無声 子音』の連続は不可である」といった制約がいかなる言語にも共通して存在するとしてこ の現象を説明する。 本稿ではこの現象が大和言葉だけでなく、他の言語にもみられること、しかしながら日本 語の漢語、外来語を含む他の言語(もしくは一言語内の同じ音韻構造を持つグループ)で は「鼻音+無声子音」が許されていることを同時に説明できるという点で制約理論の方が 優れていることを論じる。


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