継承日本語学習者が文部省国語教科書を使用する際の問題点の 一つは漢字教育である。学年配当漢字や学習漢字選出、新出漢字提示・指導方法が非漢字 環境で育つ年少者に不適当であることは自明の事実である。にもかかわらず、根強く今で も国語教科書が継承日本語プログラムで使われる理由の一つがまた漢字教育にあるという 事実も否めない。つまり、国語教科書を離れた子どもの漢字教育方法が未開発であるた め、継承日本語学校の教師や親が思い切って教科書離れができないのである。
本発表では(1)国語教科書の漢字教育アプローチを文字教育、語彙教育、認知・学習 言語教育(cognitive academic language proficiency)の三面から分析、(2)継承日 本語学校児童・生徒60名(G3〜G8)を対象とした漢字(自由連想)産出調査、(3) 調査の結果を踏まえた国語教科書に依存した漢字習得の問題点、さらに(4)継承日本語 学習者が必要とする新しい漢字教育の在り方を、話しことば教育と結びつけた漢字体験学 習(トップダウン・アプローチ)と年齢相応の漢字体系学習(ボトムアップ・アプロー チ)から模索する。現在週末だけの継承日本語プログラムでは、国語教科書の100%使 用は不可能、75%、50%がほとんどであり、本発表のような非漢字環境の年少者のた めの漢字学習方法の探究は国語教科書を今後より効果的に活用していく上でも役立つもの である。