現在北米にある補習校は半数近くが高等部を設置しているが、 生徒の滞米年数は年々上昇の傾向にあり、過半数がアメリカの大学に進学し、永住を予定 しているのが実情である。つまり生徒の大半が継承語教育の該当者になるわけだが、こう したクラスで使われている教材となると、文部省の国語教科書をそのまま使用するか、国 内の生徒に比べて国語力が低いというネガティブな視点にのみ立った教科書の内容削減で 対応することが多く、長期滞米の生徒が持つポジティブな力、つまり現地校での教育を通 して得た批評眼や、年齢相応に発達した知力、英語によって得た知識の大きさなどを積極 的に評価した継承語教育のためのカリキュラムは少なかった。
一般に文部省教科書は長期在米の高校生には理解が「難しい」と思われがちだが、それ は漢字や語彙のレベルのことであり、収録作品の内容の深さや長さになると、現地校の英 語のクラスで多くの長編を原文で読みとおし、批評眼を育ててきた高校生に十分なインパ クトを持たないという問題もある。こうした現状を改善するため、当補習校では国語教科 書を主教材にしながらも、(1)英文の副教材を多用して作品の時代背景や作家の生涯に ついての知識を広げる、(2)翻訳を使ってでも長編を全文読みとおす、(3)日米の時 事問題を文学に絡めて導入して生徒の批評眼を養いながらアイデンティティーの形成を励 ます、といったカリキュラムを作り、一定の成果を見た。
このコースは今も試行錯誤を続けながら進行中だが、中間報告としたい。