2001 ATJ Seminar
Thursday, March 22, 2001, Sheraton Hotel, Chicago, Illinois
Seminar E: Pedagogy: Teaching Japanese in the Internet Era
インターネット時代に対応した新しい日本語教育
III. インターネット時代に対応した読解教育の実践とその評価
(Implementation and Evaluation of a Japanese Language Tutorial System for Reading Using Information Technology)
川村 よし子、 東京国際大学
Yoshiko Kawamura, Tokyo International University
kawamura@tiu.ac.jp
http://language.tiu.ac.jp
日本語学習者のための読解学習支援システム「リーディング・チュウ太」は読解教材 バンク・学習支援ツール・リンク集から成り立っている。読解教材バンクには初級・ 中級用の読解教材が集められている。教材バンクに収められた教材中の単語には辞書 情報が整備され、学習者はわからない単語の読みや意味が即座にわかる仕組みになっ ている。
一方、学習支援ツールには辞書引きツール・ふりがなツール・レベル判定ツール等が 整備されている。(図1参照)
図1 学習支援ツール「チュウ太の道具箱」の入力画面
これらの支援ツールはインターネットのインタラクティブな機能を活用したもので、 学習者が入力した日本語の文章に含まれる単語の辞書引き(図2参照)やレベル判定 等を自動的に行う。
図2 辞書引きの終わった出力画面(画面左の本文の各単語は右の辞書情報と
リンクされている)
そのため学習者はインターネット上の情報、電子メール、作文等、電子化されたもの であれば自由にその場で教材化して活用することができる。また一連の読解学習が終 わった時点で学習履歴が語彙リストの形で提供される。(図3)
図3 学習履歴提示機能(リストの各単語は右の辞書情報とリンクされてい
る)
(リーディングチュウ太の仕組みや活用方法に 関しての詳しい情報はhttp://language.tiu.ac.jp/about.html#academicで提供して います。)
以上のような教材バンク・支援ツール・リンク集を有機的に統合した読解学習支援システム「リーディング・チュウ太」は、日本語学習者に自らのレベルとニーズに合わせて自由に学べる学習環境を提供している。このシステムはインターネット上で公開されている(http://language.tiu.ac.jp)ので、インターネットで日本語が読める環境にさえあれば、世界のどこからでも利用可能である。
このシステムを利用した新しい形の読解教育では読解作業の第1段階を学習者の自律学習に任せることができる。学習者は指定された教材、あるいは自ら選んだ教材を用いて自分のペースで読解学習、語彙学習をすすめる。そのためレベルの異なる学習者への対応も可能となる。教師の役割はあらかじめ適切な導入によって学習者の興味を引きだし、生の教材を読み解くための助言を与えることにある。教室では読解作業の第2段階、つまり、文中での単語の意味や使われ方、構文理解、内容理解等、文章を読み解く技術そのものを磨くことに力点が置かれる。さらに第3段階として、より深い内容把握のための質疑応答や討論あるいは意見文作成にできるだけ多くの時間をあてる。こうして一斉授業は語学学習そのものが本来目指すべき目標、他者理解や異文化理解に焦点をあてた授業が可能になる。また討論等で学習したばかりの語彙を実際に用いることによって語彙の定着を促すことができる。
2000年10月から2001年1月までの4ヶ月間、ウィーン大学日本語学科の「日本語上級読解」のクラスで「リーディング・チュウ太」を用いた授業を行った。学習者は日本語学習歴2年から4年の学生7名で中級レベル3名、上級レベル4名。授業内容は次の通り。
第1回_第2回 リーディング・チュウ太の導入教育
第3回_第4回 教材バンクの意見文を読む
a.予習:教材バンクの「意見文」を読む b.一斉授業で内容確認 c.討論
第5回_第10回 朝日新聞の「天声人語」を読む
a.予習:辞書ツールを利用して「天声人語」を読む
b.単語の読み・意味に関する小テスト(各自の単語リストをもとにすることも可能)
c.言葉の使い方・構文・表現等に留意した読解 d.主題についての討論
冬休みの課題:毎日新聞の「社説」を読んで意見文を書く
第11回_第12回 各自の書いた意見文に関するディスカッション
読解を行う際、チュウ太の辞書ツールを用いると、辞書を引くことで読解作業を中断せずにすむため学習者は読解そのものに集中できるというメリットがある。だがその一方で簡単に意味がわかってしまうため語彙の定着度が悪いのではないかという心配がある。これに関しては辞書ツールに備わっている学習履歴管理機能を活用することによって漢字の読みの定着率が高まることが明らかになっている。(北村・川村ほか)学習語彙の意味情報の定着度、さらには読解能力そのものの向上に関しては現在調査中である。
[関連論文]
北村達也・川村よし子ほか「学習履歴管理機能を持つ日本語読解支援システムの開発とその評価」『日本教育工学雑誌』23-3,pp.127-133,1999.
川村よし子「インターネット時代に対応した読解教育」『新世紀之日語教学研究国際会議論文集』台湾:東呉大学, pp.347-365, 2000.
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